2019/01/01
雉編集室 エッセー 64
石井和子

 『おそぶつあん』

 私の生まれた地域では御惣仏様という講中の寄りの文化を守り続けている。御惣仏とは村の講中の仏様で、一年毎に順番で自宅に御惣仏を据えてお寺さまを招き、講中が揃ってお参りするのである。私が幼い頃は当番家は精進料理をして、その日を終えたものである。自宅に仏壇が無い時代に始まったのかもしれない。
 私は実家を継ぎ、講中のお務めをすることが、主な役割である。今年の当番家は同級生の家で、新築の鴨居にご両親の遺影が置かれ、何とも懐かしく拝した。お寺様はご子息に変わり、講中の人は殆ど高齢者で、補聴器を付けてお経を唱和した。その後の雑談は補聴器談義に弾んだ。平成最後の「おそぶつあん」を楽しみ、心に刻んだ。
 周囲の田んぼは区画整理で大きくなり、農道もトラックが通る。前山の神ノ倉からはパラグライダーが飛ぶ。景色は大きく様変わりし、新しい年を迎えようとしている。


吉野順子

 『「三次人形の窯元」を訪ね』

 11月中旬、句会仲間7名で三次を訪ねた。県北近くになると、山の紅葉が一段と奇麗で、右を見たり左を見たり。標高が上がるにつれて、深い霧に包まれ幻想的だった。景色を眺めながら最初の目的地である“三次人形の窯元”に到着。
 快く案内されて入った仕事場の棚には、江戸時代からの人形が、所狭しと納められていた。
 人形は、子供の誕生の喜びと成長を願い、また守り神として初節句に飾られている。製作は、型作りに始まり、乾燥・素焼きを5月〜10月に、色付けは11月〜4月に行っている。色は貝の胡粉で白を出す。顔・手は数回塗り光沢を出す等一年一行程の人形作りの工夫や苦労の説明を受けた。
 製法技術は、平成18年県の無形文化財に指定されたが、数十軒あった窯元が、今は一軒残すのみになっているという事だ。
 新年に飾る手頃な干支を買い求め、この伝統工芸が続く事を祈りつつ窯元を後にした。


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